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Vol.3「照明にこだわった暮らし」前編

インテリアプロデューサー 南部昌亮

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ふだんあまり意識しない照明ですが、お部屋の雰囲気だけでなく気分まで変えることができる、インテリアの大切な構成要素です。こだわりたいポイントや使い方のヒントを知って、暮らしをセンスアップしてみませんか。

影にも美しさを感じる心が、暮らしの質を高める

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照明というと明るさや器具だけに目がいきがちですが、ちょっと視点を変えて、ご自分の感性やライフスタイルに合った光とはどういうものかを考えると、使い方にもこだわりが生まれるように思います。
例えば、文化の違いでいいますと、ヨーロッパではベッドルームに光が入ることがあまり好まれず、カーテンなどにも全遮光が求められることが多いのですが、一方ではシャンデリアのように光そのものを輝かせる照明がインテリアとして楽しまれています。
日本では谷崎潤一郎が随筆「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」で論じているように、ろうそくの灯りに揺らぐ影の移ろいなど、光よりも陰影に価値を見出す文化が長らくあり、行灯のような間接照明が好まれてきました。
ライフスタイルが変わっても、そのような光や影に対する豊かな感性を生かしていくことで、暮らしの質を高められるのではないでしょうか。

色温度の効果を取り入れて、空間のイメージに変化を

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光の色を表す尺度に「色温度」というものがあり、数値が高いほど青白く明るくなり、低いと黄色みがかったやさしい光になります。
家事をするときの見えやすさなどを考慮して、シーリングライトで室内全体を明るく照らしているご家庭も少なくないと思いますが、色温度の低い間接照明をいくつか置いて、時間帯によって点ける場所を切り替えてみるのもひとつのアイデアです。
最近では調光や調色のできるシーリングライトもありますので、日中は明るい昼光色にし、夜は色温度を下げて「あかり」を楽しんでみてはいかがでしょうか。同じライトのまま、昼は家事などの作業がしやすく、夜になると陰影が加わって、よりくつろぐことができると思います。
色温度の高低によって、空間のイメージや気分を手軽に変えることができるので、適材適所、上手に取り入れることをおすすめします。

立ったとき、座ったときの目線の高さをポイントに

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照明の位置は、どこにあれば「暮らす人がいちばん快適か」ということが基本の考え方になるものではないでしょうか。
その基準のひとつが身体スケールで、ヨーロッパでも日本でも、家具の高さなどは人間の身体機能に合わせて決められています。例えば、テーブルは床から70cm、椅子は40cmが基本ですが、30cmの差があることによって人が座って使うことができます。
照明もそのように身体スケールに沿って考えていくと、自然に位置が決まってまいります。シーリングライトの次に光源となるフロアライトは、人が立ったときの位置にすると、目線を合わせやすくなります。座ったときの目線の高さには、テーブルライトなどを。また、寝るときのライトは、ベッドの脇のナイトテーブルから20〜30cmぐらいの高さにすると、読書灯として使いやすいでしょう。夜中にトイレなどにいくときのフットライトは、目にまぶしくなく、足元をしっかり照らせるように。
このように、暮らす人に合わせて照明の位置を揃えていくと、自然に人の行動を助け、やすらぎを与えてくれるでしょう。

服にアクセサリーを合わせるように、照明のデザインを選ぶ

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間接照明などは、それ自体ではなく効果で見せるものなので、デザインも穏やかなものが多いように思います。照明は基本的には人間を支えるためのものなので、主張しすぎない器具を選ぶことをおすすめします。
モーイやフロスなどの海外ブランドでは、インテリアの主役になるような存在感のあるライトをつくっていますが、アートとして楽しみたい場合にはそのような非日常的なものを取り入れてみるのもいいと思います。
服にどんなアクセサリーが合うかを考えるように、空間全体のバランスを見ながら、ご自分の感性や暮らしに合うデザインのものを選んでみるとより楽しんでいただけるのではないでしょうか。住まいとは、おもてなしとくつろぎの場だと私は思っています。人に来ていただけるだけでなく、自分たちも心地よく暮らせる。そんな素敵な空間づくりに欠かせない要素として、照明の選び方、使い方にも少しこだわってみてはいかがでしょうか。

インテリアプロデューサー 南部 昌亮

フォワードスタイル株式会社 代表取締役社長
インテリアプロデューサー 南部 昌亮

住空間の心地よさとはデザインの美しさと品質、機能性の調和だと考え
住まう人の視点やライフシーンから発想したインテリアデザインを提案している。