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Vol.20「訪れるお客様がいて完成するホテルという空間」前編

インテリアプロデューサー 南部昌亮

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今までに取り上げてきた住まいとは違う空間であるホテルという場所。
今回は昨年オープンした「NOHGA HOTEL UENO」について語っていただきました。

今までのホテルはどちらかというと非日常を演出するものが多かったように感じています。
特別な日にドレスアップをして行くところ、というイメージです。
もちろんそういったものもあってしかるべきだと思いますが、今回こちらのホテルではあえて‘デザインをしないデザイン’というものを目指してみました。

もちろん今まで住まいのインテリアの中でお話させていただいたような目線の高さを意識した照明の配置などは考え抜いて配置しています。
その上で余地を残すことを意識しています。
ホテルという場所は様々な方がいらっしゃいます。商談のためにビジネススーツでいらっしゃる方やご近所にお住まいでお友達とおしゃべりをしながらランチを楽しむカジュアルなファッションのお客様。どのようなシーンでも自然体で心地よい空間であると感じていただくためには余白を残すことが大切ではないか、ということがスタートになっています。

実は海外のホテルに宿泊した際に、気がついたことがあります。
朝の光の中で見ると少し空間として寂しいかな、という印象を受けたことがありましたが、夜になってお食事にいらしているお客様が行き来しているところを見たときにはっと気がついたのが、ホテルという場所はお客様つまり人がいてはじめて空間として完成するということです。
そういうお客様が主役となって空間が完成するという考え方を持って時代性やトレンドを意識しすぎない、空間のレイアウトもいつでも変えられるような作りにしています。

例えばロビーギャラリーですが、ラウンジとしてくつろげるエリアとカフェやダイニングバーとして飲食を楽しめるエリア、という形で大まかなカテゴライズはしていますがテーブル等を片付けて一体の空間として立食パーティー仕様にもできる作りになっています。

このように空間として様々な余白を組み込んだ上で、インテリアとしては随所に様々なこだわりをちりばめています。

ロビーギャラリーの床にイタリア製の金のタイルをランダムに貼っています。
タイル自体もこだわりのあるものですが、それ以上に貼り方に注目してみてください。
まっすぐに入れるのではなく、斜めに振っていることでダイナミズムを演出しています。

2階のライブラリーラウンジの椅子もひとつひとつこだわりが詰っています。
ビンテージもので、手で削りだしてつくっているものです。

1階のロビーギャラリーに飾ってあるアートの一部は、専門のキュレーターにより実は定期的に変わっていきます。いつ行っても新しい発見がある空間でもあるようになっています。

あえて全部の家具を統一させるのではなく様々なデザインのものを置いていることもここに来てくれる方に楽しんでいただきたいという発想からきています。

2018年11月1日に開業した野村不動産のホテル
新ブランド「 NOHGA HOTEL UENO 」→ 公式サイトはこちら

インテリアプロデューサー 南部 昌亮

フォワードスタイル株式会社 代表取締役社長
インテリアプロデューサー 南部 昌亮

住空間の心地よさとはデザインの美しさと品質、機能性の調和だと考え
住まう人の視点やライフシーンから発想したインテリアデザインを提案している。