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第14回
駅ごとの個性と共に発展する中央線の再開発エリア

東京では、2000年代初頭から各所で再開発が加速しています。最近では「100年に一度」といわれる「渋谷」駅周辺の再開発や、今年開業するJR東日本の「高輪ゲートウェイ」駅、東京メトロ「虎ノ門ヒルズ」駅といった新駅とその周辺エリアの再開発が話題ですが、一方で、都心以外でも居住用マンションを中心とした再開発が進んでいます。特にJR中央線は、2010年11月に三鷹~立川間の高架化工事が完了し、それと前後して「三鷹」駅から西のエリアの駅前の様子が一変しました。

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再開発で街の実力を知らしめた「立川」

中央線沿線の主な駅周辺では、この10年間でどのくらいのマンションが供給されたのでしょうか。2009年9月から19年9月までの新築マンション供給戸数を見てみると、「三鷹」「武蔵境」「八王子」で2000戸以上、「吉祥寺」で約1700戸、「国分寺」で約1600戸、「立川」では約1200戸、「中野」「武蔵小金井」「西国分寺」「豊田」で1000戸前後といった具合です(不動産経済研究所調べ)。

これらのうち、駅直結や駅近に立地する物件は、鉄道と一体となった駅周辺再開発事業の一環として建設されたのが特徴です。構造としては「タワーマンション」で、低層階には商業施設や公共施設が同居しているのが一般的です。

三鷹より西で2010年前後に竣工した再開発による駅直結・駅近物件には、「プラウドタワー武蔵小金井」(武蔵小金井駅、2008年・200戸)、武蔵野タワーズ(三鷹駅、2010年・570戸)、サザンスカイタワーレジデンス(八王子駅、2010年・390戸)などがあります。

以降も再開発に伴う駅直結・駅近タワーマンションの供給は続きますが、中でも、今や多摩地区の中心と言われるまでに発展した「立川」駅の実力を知らしめたのが、立川第一デパートがあった場所に2016年に竣工した「プラウドタワー立川」(319戸)です。

中央線のほか、JRでは南武線・青梅線に加え、多摩都市モノレールが乗り入れる交通の要所であり、駅周辺施設の整備も進む「立川」駅の直結物件とあって、分譲平均坪単価が342.6万円と当時の都心マンション並みだったにもかかわらず、第1期販売分230戸が即日完売したことは話題になりました。

沿線各駅独自の個性が資産価値を上げている

こうした中央線沿線の駅直結・駅近マンションの特徴について、不動産経済研究所・主任研究員の松田忠司氏は、「人が集う仕組みが整っている」と分析します。

<駅直結・駅近マンションの特徴>

  • ・商業施設だけでなく、医療・行政・文化施設もマンションの建物内に同居
  • ・生活利便性の良さから、リタイアメント世代、共稼ぎ子育て世代など多世代が集まる
  • ・住民の新陳代謝でインフラが整備され、街全体の価値が上がる循環が生まれる

<中央線沿線の駅ならではのプラスアルファ>

  • ・駅間距離が長く、各駅周辺に「〇〇の街」といった独自の個性を持つ街が形成されている
  • ・駅前周辺以外にも平らな土地が多いので、住宅や商業施設が広がりやすい

実際、中央線沿線には個性的な駅がいくつもあります。仕事帰りや休日に定期券で高円寺のライブハウスへ、美術館や公園に行くなら吉祥寺や三鷹へという具合に、そこにしかない街の文化、施設、自然を気軽に楽しむことができます。

都心の駅直結・駅前物件のメリットが「職・住近接」だとすれば、中央線沿線の駅の場合、職場からは多少離れても、住居と娯楽や自然が近接するメリットを享受できます。こうしたことから多世代が集まり、住民の新陳代謝が生まれているのです。

こうした発展要因を持つ中央線沿線ですから、必然的に不動産の価値も上昇中です。不動産経済研究所の調査によれば、2019年の首都圏新築マンションの平均価格は5980万円とバブル最盛期に近い水準に達しており、東京都下でも前年に比べて4.8%アップしています。

例えば、三鷹駅南口付近の新築マンション坪単価は、2009年で287.2万円、19年には452.7万円まで上昇しました。国分寺駅北口付近では同様に、264.7万円から363.1万円まで上昇しています(同研究所調べ)。

なお、三鷹より都心に近い「中野」駅周辺でも、2012年に駅北側の警察大学校跡に複数の大学が誘致され、駅の南側には「中野ツインマークタワー」(234戸)が竣工するなど大規模な再開発が行われました。

一連の再開発は現在も進行中であり、例えば、駅南側の中野3丁目付近の新築マンション坪単価は2009年で221.9万円でしたが、今後の再開発で、「将来的には駅周辺は坪単価が450万円程度まで上がる可能性もある」と松田氏は指摘しています。

イラスト/大和涼子
ダイヤモンド・セレクト編集部(ダイヤモンド社)